“倉庫に換気設備は必要ない”
“エアコンがあるから大丈夫”
と考えていませんか?
本記事では、倉庫に換気設備は必要か不要かだけをお伝えするのではなく、その理由もあわせて解説していきます。
倉庫に換気設備は必要?
建築基準法で「居室」とみなされる建物においては換気設備が必要となります。
倉庫に関しては、事務室などが併設されている倉庫は居室とみなされますが、基本的には「非居室」と定義されます。
つまり、建築基準法上では倉庫に換気設備は不要と考えられます。
しかし、新型コロナウイルス感染予防の観点から、密閉空間においての換気が求められています。
日本政府は集団感染が確認された場所で共通する3条件、いわゆる“三密”の条件を挙げていますが、人が密集していることと近距離で会話していることのほかに、換気が悪い空間を指摘しています。
新型コロナウイルスの感染経路は接触感染、飛沫感染が主だと言われていますが、換気の不十分な空間においてウイルス濃度が高くなることも指摘されていて、空気の流れから感染するリスクも現在では警戒されています。
厚生労働省の発表では、オフィスや商業施設において一人当たり30㎥/hの換気量が確保されていれば、悪い密閉空間には当たらないという指標も出ています。
換気が法的に必要ではない倉庫とはいえ、倉庫の立地や作業空間などを踏まえた感染拡大防止は事業者の責務と言えるでしょう。
参考:新型コロナウイルス感染症制御における「換気」に関して(日本医師会 COVID-19有識者会議)
エアコンでは換気は出来ない
まず抑えておきたいのがエアコンに対する理解です。
夏や冬に活躍するエアコンですが、誤解されることも多いですがエアコンは空気を入れ替えていません。
エアコンは室内機と室外機に備わっている熱交換器で空気を冷やしたり、温めたりして調整しているだけなので、換気は一切行われないのです。
そのため、倉庫内にもしも新型コロナウイルスに感染した作業員がいた場合、ウイルスは時間とともに空間に溜まっていってしまいます。
さらに正確に説明を加えると、感染者が発したウイルスを含むエアロゾル粒子(空気中に漂う細かい粒)は長時間空気中に留まり続けるからです。
ウイルスを含むエアロゾル粒子は、空気中を浮遊した状態で3時間以上も生きている可能性があるとも言われています。
そのため、エアコンを可動させることで、新型コロナウイルスを含んだ空気が空間を舞い続けることになってしまいます。
換気が出来ていない倉庫のような密閉空間は、新型コロナウイルスを拡大させる可能性の一つに過ぎず、換気を徹底することで感染が確実に予防できるわけではありません。
しかしリスクを減らす要因にはなるので、やはり正しい換気は不可欠なのです。
具体的な換気方法
まずどのような倉庫でも実践できることとして、窓の開閉による換気です。
これはできる限り徹底してこまめに行いたいところです。
窓を開ける際のポイントは、二方向の開放を意識することです。空気の流れをつくることでより換気が効果的に行えるようになります。
また、普段は動かしていない換気扇などがあれば、倉庫作業に支障をきたさない程度に可動させることで、より換気効果が期待できます。
新たに換気設備を取りつけるという方法もあります。
例えば倉庫の天井に大型のファンなどを取りつけることで、高い換気効果が期待できます。
そして新たな場所に取りつけることで、それまで空気が溜まって淀んでいた場所の換気も可能となるので感染のリスクを減らせることにつながります。
天井にファンを備えることで換気以外の効果も期待できますが、それは冷房と併用することで冷房効果を高めることもできますし、結露やカビの防止にも役立ちます。もちろん、冷房がない倉庫だったとしても、ファンからの風により体感温度を下げることはできます。
まとめ
倉庫は基本的に換気設備の設置が法的に求められない場合が多いですが、新型コロナウイルスの感染予防の観点からは換気は必要不可欠だと言えます。
新型コロナウイルスの感染経路は接触感染、飛沫感染だけではないことも分かってきていますが、事業者には正しい知識を得て正しい換気を実践する責務があります。
倉庫の換気に大きな効果が期待できるのは換気設備の導入だと言えるかもしれません。
法的な設置義務はありませんが、事業者一人一人に責任ある行動が求められているのは間違いありません。