営業倉庫において、天井クレーンは重要な役割を持つ反面、使い方や点検を怠ると悲惨な事故となり得ます。
悲惨な事故を未然に防ぐためにも、過去に起こった天井クレーンの事故を知り、健全な運用の参考にして頂ければと思います。
それでは早速みていきましょう。
天井クレーン事故でよくある原因は?
天井クレーン事故のよくある原因は以下の3つが挙げられます。
その①・・・「摩耗による事故」
その②・・・「点検を怠っている」
その③・・・「無資格で運転する」
その①・・・「摩耗による事故」
天井クレーンの事故のよくある原因の1つは「摩耗」です。天井クレーンを繰り返し使用することであらゆる箇所が摩耗します。
例えば摩耗してしまったワイヤーロープが切断されたことによる落下事故の事例もあります。ワイヤーロープには適切な交換時期がありますが、その時期を過ぎても使用してしまうと摩耗による切断に繋がってしまうこともあります。
また、天井クレーンのサドルの車輪が摩耗していることにより走行レールから脱線してしまい、ガーターが落下して事故につながってしまったといった事例もあります。
その②・・・「点検を怠っている」
「点検を怠っている」というのも天井クレーン事故のよくある原因の一つです。定期自主検査において問題点が見つかったにも関わらず、対処しなかったために事故に繋がるケースもあります。
作業前の点検を実施しなかったことによる事故も発生しています。
その③・・・「無資格で運転する」
「無資格で運転する」など法令遵守違反も事故の原因の一つです。天井クレーンの操作には資格が必要です。
運転ミスや不適切な運転が事故の原因になります。事故を実際に起こしてしまう作業員だけの問題ではなく、無資格で運転させている管理者側の安全に対する意識の低さも原因の一つとなっています。
天井クレーンにひかれる事故
天井クレーンにひかれる事故も発生しています。
天井クレーンの走行レール周辺を清掃する際に、走行してきた天井クレーンにひかれて死亡した事例があります。
清掃に当たったのは入社間もない作業員で、安全衛生教育は受けていませんでした。現場の作業長は清掃作業はすぐに終わるという理由から、天井クレーンの運転手に清掃作業があることを伝えていませんでした。
天井クレーンの運転手はつり具に注視していたため、清掃作業員の存在に気がつかず引いてしまい、死亡させてしまいました。
事故が発生してしまった原因は、作業員が新人で安全に対する知識が足りていなかったことが一つあります。
そのため、清掃に使用するホースをその接続口までつなぐ際に、歩く必要のない走行レールを歩いてしまい、事故につながってしまいました。また、天井クレーンが清掃作業者と接触することを防止する措置を事前に取らなかったことも原因の一つと言えます。
天井クレーンから墜落する事故
天井クレーンから墜落する事故も発生しています。
天井クレーンのガーダー上で清掃する際に、横行装置が作動してしまい墜落して死亡した事例です。
墜落して死亡した作業員は入社してからわずかな新人で、安全衛生教育は受けていませんでした。清掃を完了させるためには横行装置を動かす必要がありました。清掃に当たっていない作業員が運転手とコンタクトを取り、清掃作業員に装置が動くまで待機するように指示を出しました。
清掃作業員はしばらくしても動かないので大丈夫だと事故判断し、横行装置に足をかけたところ、それと同時に装置が動き出してしまい、滑落して死亡してしまいました。
事故の原因は「清掃作業と同時に天井クレーンの操作が行われたこと」にあります。
またきちんと作業指揮者を配置しておらず、具体的な連絡合図も決まっていませんでした。そのため清掃作業員が動いていいと自分で判断したことが事故につながりました。清掃作業員の安全上の知識も足りていませんでした。
天井クレーンの事故への対策方法
天井クレーンの事故への対策は、まず「点検作業を確実に行うこと」が一つ挙げられます。
年次定期自主検査、月次定期自主検査、作業開始前点検などを実行し、検査記録を保存しておく必要があります。
そして、天井クレーンの運転は有資格者でなければなりません。「無資格で運転する」行為は事故の原因になるだけでなく、法令遵守違反で罪に問われます。万が一事故が起こってしまった場合、作業員だけの問題ではなく、無資格で運転させている管理者側にも責任が問われることになり、事業の存続にも影響します。
管理者側は、天井クレーンを運転するものに対して、クレーン運転免許や特別教育を修了しているかをしっかりと確認する必要があります。クレーンの運転において各種必要な資格をチェックして、有資格者をリストアップしておくことが大切です。
また天井クレーンで作業をしている間は、周辺で作業している作業員と天井クレーンが接触しないよう「監視人を置く必要」があります。走行レール上にストッパーを置くといった対策も必要です。
危険を伴う作業の場合には、天井クレーンとの接触を防止する方法などをきちんと定めて、作業員全てに通知することが大切です。管理者が事故を防ぐための知識をきちんと持っていることも重要ですし、それを共有することで事故を防ぐことにつながります。新しく雇い入れた作業員への安全衛生教育を徹底して、安全に天井クレーンを使用するように心がけましょう。